独立開業して美容室を経営したい!実際にかかる資金や費用は?
美容師としてキャリアを積まれている方のなかには、いずれ独立・開業して自分の理想の美容室を持ちたいとお考えの方もおられるでしょう。
しかし美容室を開業するとなると、美容師としての腕はもちろんのこと、より必要なのは経営者としての能力です。
いくらヘアスタイリングの腕がよくても経営者としての能力や勉強をしっかり積み上げておかないと、事業はすぐに行き詰まってしまいます。
美容室もここ10年以上は飽和状態にあり、しっかりとした経営戦略と資金戦略を立ててから開業しないと生き残ることは難しい状況です。
この記事では、これから美容室を独立・開業しようかと考え始めた方に、最低限おさえてほしい資金戦略や経営戦略の基本的な知識について説明していきます。
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美容室の独立・開業にかかる初期費用はどれくらい?
ではまず開業にかかる初期費用について簡単にシミュレーションしてみましょう。開業は10坪前後の広さでスタッフはあなた1人の美容室と仮定します。
まず必要となるのは「物件取得費用」です。物件には物件家賃の他にも敷金、礼金や保証金、仲介手数料、そして居抜き物件の場合は譲渡費用などがかかります。立地条件にもよりますが10坪程度でもトータルで100万円から200万円はかかります。物件を借りるときは敷金、礼金や保証金などについては契約書の内容をしっかり把握して、後でトラブルになることを防がなければなりません。
そして次にかかる費用は「内装工事費」です。お店のコンセプトに合った内装に仕上げなければなりませんが、これも複数の内装工事業者に相見積もりをとってもらい、できるだけ費用をおさえたいところです。それでもやはり坪単価で30万円から60万円になりますから、10坪ではかなり安くおさえても300万円ほどかかることになるでしょう。そして美容室に必要な専門機材や薬剤などの「設備費用」は、リースなどを利用してできるだけコストをおさえたとしても150万円から200万円ほどはかかるようです。
その他の事務用品、広告費用、雑費などでだいたい70万円前後かかりますので、トータルでおおよそ600万円から800万円ほどが初期費用として必要になります。これは独立・開業のコストとしてはかなり安いケースを想定しているので、もう少し大きな規模の店舗やスタッフを数人雇って開業する場合にはさらに費用がかかると考えておきましょう。
【初期費用イメージ】
物件取得費用 100~200万円
内装工事費 坪単価30~60万
設備費用 150~200万円
広告費用等 70万円前後
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美容室の運営にかかる運転資金はどれくらい?
それでは開業した後の経営において、資金繰りはどういった状況になるのかも考えてみましょう。他の一般的な業種と違って美容室の強みとなるのは、仕入れにほとんどお金がかからないことです。したがって美容室の経営では純利益が30%確保できると経営として成り立つとされています。ここでも1人経営の10坪規模の美容室で簡単なシミュレーションをしてみましょう。
まず月々にかかる固定費ですが、固定費は家賃などの他に20万円以上の設備投資費を一定年数にわたって分配する会計処理である「減価償却費」を計算に入れます。家賃や設備のリース代などでだいたい月40万円前後、内装工事費を設備費用と考えて5年で減価償却すると計算すると、内装工事費を仮に500万円として月々の減価償却費は約8万3000円になります。これで固定費はおよそ48万8000円ですから約50万円と考えましょう。これに加えて光熱費、通信費、広告費などの変動費が20万円ほどかかりますので、トータルで約70万円、これに純利益30%分である30万円を加えた月間売り上げ100万円が、黒字経営のボーダーラインという事になります。
ここから営業日を月に24日、1日当たり6人のお客さんをとると計算すると、客単価はおよそ7,000円でやっと黒字経営ということになります。1日6人のお客さんを1人で担当して平均単価7,000円というのはかなり高いハードルです。したがってこういった経営の計算を考えていくと、経費はかかったとしてもお客さんの回転数を上げるためにはスタッフを雇った方が経営の効率は良いということもわかってきますね。
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初期費用や経費を安くおさえるには?
こういった初期費用や運転資金を安くおさえる方法はあるのでしょうか?
まず大多数の美容室のオーナーは自己資金だけで開業していません。たいていは金融機関での借り入れなどによって資金調達をしています。銀行から借り入れるという方法もありますが、担保に入れる不動産などを持っていないとなかなか厳しいでしょう。
美容室の独立・開業で多くのオーナーが利用するのは「日本政策金融公庫」という政府系金融機関です。融資限度額は低めですが、比較的金利も安く審査も通りやすいようです。
とはいえ、初期費用全額を担保も信用保証もなしで借りられるということはないでしょうから、初期費用の30%から50%は自己資金を用意しておく必要があります。
この他にも中小企業向けの債務を保証してくれる「信用保証協会」を利用して、国や地方自治体の制度融資や地元の金融機関から融資を受ける方法などもあります。
いずれの方法であってもしっかりした資金繰りの計画を立てて審査に臨むことが重要です。スタッフを雇う場合は、厚生労働省の関係機関が実施している「助成金制度」を利用するという方法もあります。
これは一定の条件を満たす従業員を雇うことで公的機関から出資される援助金で、審査や手続きに手間がかかるのが難点ですが助成金が下りるとそのお金は返済の必要がなく、うまく利用すると経営の手助けになってくれます。
経営費用のなかで大きな部分を占める「物件取得費」を安くおさえたい場合は、都内でも家賃が高いエリアを避けて物件を選択することや、内装工事や配管工事などのコストを節約できる居抜き物件を活用するという選択肢もあります。
また最新機材を少ない費用で使いたい場合は、リースを使って設備費用をおさえるのも良い方法です。
借り入れして購入するよりも安く最先端の機器を利用できますし、会計上は経費として処理しますのでバランスシート上では経営が安定します。
レンタルと違って修理費用は借主負担であることや途中解約ができないことなどのデメリットも多少ありますので、利用する目的と経費の目的に合わせてうまく利用しましょう。
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はじめての美容室経営で失敗しないためには?
いままで簡単に述べてきたことは、それほど難しい会計上の専門知識や経営の知識ではありません。
調べれば誰でもすぐにわかる事なのですが、実際にこうした知識を使って具体的なシミュレーションをして独立・開業を考えている未来のオーナーさんは少ないようです。やはり美容師としての腕を磨くことやヘアスタイリングの技術について自信のある方は多いのですが、経営についての知識や計画が未熟なまま開業される方も多く、そういった方は早い段階で美容室の経営に行き詰まってしまいます。そこで美容室の経営に失敗しないためには経営についてしっかり学び、開業前に万全の準備をしておく必要があります。開業の準備などを具体的に始めると、想像以上にやることが多くて混乱してしまいそうになりますので、いつ何を、どの順番でやるのかをノートなどで整理しながら、集客や基本的な会計知識などの勉強もしていきましょう。
自己資金をしっかり貯めて資金調達の計画を立て、許認可の手続きなど専門家に相談すべきことは専門家に相談するなどして、テナントを借りる前には8割がた開業準備を終えているくらいでないと安定した経営は難しいでしょう。テナントを借りるとできるだけ早く開業しなければ経費がかさんできますし、開業してから資金繰りや設備の準備、スタッフの募集などをやっているといつまでたっても営業できないまま赤字ばかり垂れ流してしまう事態になりかねません。
開業してから経営者が最も注力しなければならないのが「集客」ですから、集客以外の準備はすべて終わらせてから開業するのが、早く美容室の経営を軌道に乗せる重要なポイントです。
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まとめ
いかがでしたか?このコラムで例にあげた資金のシミュレーションはあくまでひとつの例ですので立地条件やお店のコンセプトなどによって変わってきますし、スタッフを雇った場合はさらに費用がかかることになります。
しかし基本的な計算方法はだいたい同じですので、ご自身の計画を立てるときのひとつの参考例として活用してください。
特に資金計画のなかでも大きな部分を占める「物件」の選定は、美容室経営においては生命線です。
美容室成功のカギは物件の立地条件でほぼ決まると言う経営者も多くいるほどで、物件選びの際には細心の注意をはらって綿密な市場調査を行ってください。
また経営に関する大量の情報にあまり流されず、自分で決めるところと専門家に頼むところとをうまく切り分けて独立・開業の計画を立てるのもポイントです。
美容師としてだけでなく経営者としてのマインドも身につけて、万全の準備をして独立・開業を目指しましょう。
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