老人ホームの開業・経営を成功させるポイント
日本人の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳と世界第2位の水準に達しています(『平成28年簡易生命表』より)。 いわば、世界に類を見ない長寿国ですが、長寿国ならではの悩みも抱えているのが現実です。 認知症など介護が必要な高齢者をどのようにケアしていくのかは重要な課題です。
また、介護の必要のない高齢者であっても、どれだけ充実した生活環境を提供していくのかも考える必要があるでしょう。 さらに、核家族化・少子化の進行、いわゆる「介護疲れ」による家族・親族間トラブルなどにも向き合っていかなくてはいけません。
これらの高齢者を取り巻く問題をうまく解決するために、老人ホームが果たす役割は非常に大きいはずです。 そこで今回は、老人ホームを開業し、経営を成功させるためのポイントについて解説していきます。
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老人ホームをさらに細かく分類すると
一般的に、老人介護施設を指す言葉として「老人ホーム」が使われていますが、実は運営体制やサービスの提供形態などによって呼び名が異なります。 まず、「特別養護老人ホーム」ですが、身体上または精神上著しい障害があるために、常時介護を必要とする(原則)65歳以上の人で、自宅等で介護を受けることが困難な人を対象にした施設です。
なお、介護老人福祉施設という名前も使われていますが、これは介護保険法での呼称です。 一般的には、老人福祉法で用いられる特別養護老人ホームの呼称の方が有名でしょう。 地方公共団体と社会福祉法人に限って設置・運営が認められている施設であるため、公的支援や税制上の優遇措置を受けられるのが大きな特徴です。 また、公益性の確保から、低所得者や単身者を優先的に受け入れており、利用料金も低く抑えられています。 その反面、待機者が非常に多いという問題も指摘され、2015年度介護保険制度の改定以降は、原則として要介護3以上の要介護者のみを受け入れています。
次に、「有料老人ホーム」とは、民間企業や社会福祉法人が運営する施設で、老人福祉法の定めによって設置されています。 さらに有料老人ホームを細かく分類すると、「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類に分かれます。 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのスタッフまたは委託先の介護サービス事業者が提供する介護サービスが受けられる老人ホームのことです。 前者を「一般型特定施設入居者生活介護」、後者を「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」といいます。
なお、運営にあたっては、介護保険法に定めるところの「特定施設入居者生活介護」の指定を都道府県知事から受けなくてはいけません。 住宅型有料老人ホームとは、介護が必要な場合は外部の居宅介護サービス事業者と契約を結び、訪問介護サービスを受けたり、近隣のデイサービスに通えたりする老人ホームです。 介護付き有料老人ホームとは違い、施設内に介護スタッフがいるわけではありません。 健康型有料老人ホームとは、自立して生活できる人のみを入居者として受け入れる老人ホームです。 仮に介護が必要になった場合は、退去する必要があるのが大きな特徴でしょう。
最後に、「サービス付き高齢者住宅」とは、安否確認と生活相談の2つのサービスを提供することが義務付けられている、自立して生活を送れる高齢者のための住宅です。 一口で、老人ホームといっても、入居者の自立度、介護の必要性、介護サービスの提供形態によって大きな差があります。 介護の必要性が高くなればなるほど、介護福祉士、看護師、医師、理学療法士など専門的なスタッフを配置しなくてはいけません。
また、認知症専門士を雇って認知症の対応を強化するなど、地域のニーズとターゲットに合わせた工夫が必要になります。 まずは、どの老人ホームを運営するのか考えるところから始めましょう。
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老人ホーム開業に必要な資格・手続きは
老人ホーム開業にあたって必要な資格や手続きはいくつかあります。 まず、どの老人ホームであっても、都道府県知事に対して老人福祉法または社会福祉法に基づく申請・届出が必須となります。 税金・労務関連の手続きでは、個人事業主として開業するのであれば、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」および所得税の「青色申告承認申請書」を提出しましょう。
一方、法人であれば、社会保険事務所で健康保険・厚生年金関連、公共職業安定所で雇用保険関連、労働基準監督署で労災保険関連の手続きを行いましょう。 このあたりの手続きをおろそかにすると、従業員が仕事中にケガや病気になった場合、必要な保障が受けられなくなるリスクが高くなります。
また、職員を募集する際は、介護福祉士・ケアマネージャー等の介護専門資格保有者や看護師を必ず採用しましょう。 特別養護老人ホームの場合、看護職員または介護職員を入居者3人に対し1人(常勤換算)以上配置しなければいけない決まりになっています。
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バリアフリーは必須!意外とかかる開設費用
介護の必要性の差こそあれ、老人ホームは高齢者が生活する場であるため、バリアフリー化は必須です。 入居時点で介護が必要なかったとしても、思わぬところで転倒してケガをしたことがきっかけで、寝たきりなど常時介護が必要な状態になってしまう可能性は十分にあります。 それを防ぐためにも、老人ホームの建物を新たに建設する場合や、既存の建物に手を加える場合の両方において、バリアフリーを意識した設計を行いましょう。
なお、建物の規模・工事の内容によって実際の開設費用は異なりますが、目安としては定員50人程度の施設で3億円程度となります。 初めて老人ホームを開業する場合は、いきなり定員を多くするのではなく、まずは少人数から始めるのも一つの方法です。 小さく始めて、運営ノウハウの習得や、スタッフの教育体制を整備してから、徐々に規模を拡大していくといいでしょう。 金融機関などから融資を受ける場合も、少額の借入なら審査に通りやすいので、無理のない運営が可能になります。
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コストを抑えたいなら寄宿舎タイプも視野に
少しでも老人ホームの建設コストを抑えたいなら、寄宿舎を老人ホームとして用途変更する方法も選択肢に入れましょう。 社宅・独身寮・ホテルなどとして使われていた物件をリフォームし、各部屋に入居してもらうという形態です。 新しく一から建物を作るわけではないため建設コストが比較的安くなるのは大きな魅力です。
また、共用スペースを確保しておけば、利用者同士のコミュニケーションの場としても活用できます。 こまめに交流が図れることも、利用者同士および利用者とスタッフの両方が快適かつ安全に過ごすためには必要なことなので、最大限の配慮をしてリフォームに臨みましょう。
さらに、コスト削減の観点からは、建物を地主に建ててもらい、その建物を借り上げて介護事業を運営するのも効果的です。 地主の協力をいかに仰ぐかがカギとなりますが、自分で建設にかかる借入金を返済する必要がなくなるのは大きなメリットになります。 その際、地主に対して魅力あるビジネスプランを示せるかどうかが、説得を成功させるには大事なポイントです。
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老人ホーム開設に活用できる2つの助成金と融資制度
老人ホームを開設するための資金を調達するには、助成金を利用するのも一つの手段です。 そこで、開設にあたって活用できる助成金を2つ紹介しましょう。
まず、「介護基盤人材確保助成金」ですが、老人ホームの新規開設に伴い新規特定労働者を雇用した場合、1名の採用につき最大70万円(半年分)が支給される制度です。 なお、特定労働者とは、1年以上の実務経験がある介護福祉士・社会福祉士・医師・ホームヘルパー1級保持者・看護師・准看護師を指します。
次に、「介護雇用管理助成金」とは、就業規則・賃金規則・採用パンフレットの作成、求人サイトや新聞の折り込みチラシなどで従業員を募集する際に実際にかかった費用の半分を支給する制度です。
なお、上限額は100万円となっています。
また、助成金ではありませんが、開設するのがサービス付き高齢者向け住宅である場合、住宅金融支援機構の「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」が利用できます。 利用にあたっては事前相談が必須であるため、自分が開業したい地域を管轄する機構窓口に申し込みを行いましょう。
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老人ホーム経営の収入例を紹介
老人ホーム経営の収入がいくらになるかは、介護サービスの提供状況や地域によって差があるので、一概には言えません。 ここでは、地主にサービス付き高齢者住宅を建設してもらい、その建物を借り上げて介護事業を始める場合を想定した収支モデルを紹介しましょう。
まず、家賃収益ですが、月間で120万円(=入居者20名×6万円)です。
このほかに、ショートステイの利用料として月間60万円(=20名×1000円×30日)、介護報酬として1000万円(=40名×25万円)、食事代として162万円(=40名×4万500円)を計上し、合計額は1342万円です。
一方、地主に支払う家賃は毎月83万円、介護スタッフの人件費を240万円、その他諸経費を80万円として計算すると、支出の合計額は403万円になります。
そのため、月間収益は収入と支出の差額の939万円になります。
もちろん、あくまでこれは一例であり、実際の収益額は老人ホームの規模や運営状況により異なるため、参考程度にとらえてください。
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まとめ
老人ホームは、運営形態によって役割が異なりますが、高齢者の生活を支援するという意味で社会的に意義のある仕事です。 一方で、質の高いサービスをコンスタントに提供する体制をいち早く整えられるかどうかで、投下した資金の回収期間も決まってきます。 残念なことに、スタッフの育成に力を入れていない老人ホームの存在も報道されているのが現状です。
そのため、スタッフの福利厚生や研修制度の整備なども視野に入れ、働きやすい環境を整える努力も大事になります。 そして、何よりも入居者やその家族に喜んでもらいたいという気持ちを持ち続けることが大事でしょう。 そうした気持ちをスタッフと共有し、切磋琢磨しながら入居者やその家族に向き合っていくことこそが、実は老人ホーム経営で成功するために最も必要なものかもしれません。
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